【定員(残席)状況】高3生・・・2名 高2生・・・2名 高1生・・・3名 中3生・・・4名 中2生・・・4名 中1生・・・4名 小学生・・・10名 おとな・・・若干名

最近の受験事情と受験生の傾向

どうやらSTEAM教育が大切らしいということはわかった。でも、学校の成績や受験はどうなるの?テストで点数取れないと困るのでは?―――と疑問を抱くのが正直なところではないでしょうか?

結論から言えば「いずれ入試制度が変わるから気にしない!」ことです。
青森県の宮下知事は青森県教育改革有識者会議で「県立高校入試のあり方について議論を深めていきたい」と語りました。同会議メンバーである日野田直彦氏も「ペーパーテストでスコアを取るという旧来型の学力観でよいのか、それが本当に世界で活躍する力につながるのかを確認していくことが必要です」と話しています。
でも、変わるのは「いずれ」です。まだ時間がかかります。
ですから、現実的には今の入試制度を受け入れましょう(受験しないor海外の高校大学に進学するという選択肢もありますが、それはまた別のお話)。
最近の受験事情を踏まえ、どのような心構えで教育に向き合えばいいのかヒントになれば幸いです。

目次

1.大学入試制度

近年の大学入試制度はとても複雑です。
ここですべてを書くと大変なことになるので、まずは以下のリンク先をご覧ください。
・スタディサプリ進路 https://shingakunet.com/journal/column/20211001000001/

リンク先にあるように、大学入試の方式には大きく分けて「一般選抜」「学校推薦型選抜(公募制・指定校制)」「総合型選抜」の3種類があります。「学校推薦型選抜」と「総合型選抜」をまとめて「推薦入試」としています。また、一般選抜の試験には大学入試センターが実施する「大学入学共通テスト」(通称:共通テスト)と各大学が独自に実施する「個別試験」があります。

大学入試の方式には「一般選抜」「学校推薦型選抜」「総合型選抜」がある。

          (作成元:AOI HUB)

一般選抜とは、いわゆる学科試験です。英語や数学といった科目の筆記試験を受けます。国公立の多くは共通テスト+個別試験が課されます。私立では共通テストのみや個別試験のみなど多様で複雑な方式になっていますが、必要な科目数は2~3科目である場合がほとんどです。
総合型選抜は「一芸入試」として始まり、その後AC入試やAO入試と移り変わってきた方式のこと。出願書類の志望理由書や実技試験、面接などを通じて受験生を総合的に評価し、受験生の人物像と大学の求める学生像(アドミッション・ポリシー)がどれだけ合っているかで合否が決まります。偏差値は関係なく、大学で学びたいことをアピールする入試です。

次項で述べるように各大学で推薦の枠が増えているのですが、背景には早めに学生を確保するという経営的なメリットの他に「一発勝負」「知識偏重」から脱却するねらいが考えられます。
例えば ①総合型 ②共通テスト利用 ③一般前期 ④同後期 と、一つの大学の同じ学部・学科を4回受けられるケースがあります。総合型選抜と他の入試方式を併願すると合格のチャンスを増やすことができるのです。
また、偏差値が関係ない総合型選抜では志望校を偏差値で選ばなくていいため、他の受験方法で届かない大学でも総合型選抜にチャレンジすることで合格できる可能性があります
さらに、総合型選抜では志望理由を大学に伝える必要があるので、受験対策をすることが大学入学の目的を考えることに繋がります

このような流れから、国公立であっても個別試験のみで選抜する「大学側の共通テスト離れ」総合型選抜枠の定員を増やす可能性があります。今後の動きに要注目です。

2.大学受験生の傾向

驚くべきことに、今や合格者数の半数以上を推薦が占めており、年内に入試が終わってしまいます

大学入試は推薦型での定員が増えたことで、年内に入試を終える学生が半数を超えている

             (作成元:大学イノベーション研究所 山内太地氏)

そして、学生の傾向としては「行きたい大学」より「行ける大学」を選ぶようになってきています。
なぜか?
一つは、共通テストが難しいから。ただし、難しいのは質ではなく量の話です(問題の質はむしろ低下したと指摘する大学関係者もいます)。全体的に分量が多く、情報処理能力が問われる問題が出されています。そのため、じっくり思考するタイプの学生にとっては不利な状況です。
あとは今の10代が好む “タイパ・コスパ” の面から共通テスト離れが進んでいます。私立は合格者枠の6割が推薦&一般でも2~3科目で済むので、現行で6教科8科目が必要な共通テストを避けるのです。科目数が多いと対策も本番も負担が大きいですからね。

3.高校入試の全国的な傾向

全国的に高校入試は大学入試、特に共通テストの変化を受けて出題傾向が変わってきました。

①⻑⽂化された問題
問に入るまでが長い!
場面や条件の設定を説明する文が長く、特に会話形式が多く見られます。例えば、ある実験について先生と生徒が意     見を交わすような内容です。
情報処理能力と読解力が求められるとともに、普段の授業で「主体的・対話的で深い学び」ができているかがポイントです。

②『思考⼒・判断⼒・表現⼒』を問う問題
基礎知識だけで答えられる問題もありますが、それだけでは平均点に届きません。
日常生活を題材とした問題、ある事象や事実にその背景を絡めた問題が増えているので、背景や現在の取り巻く環境を踏まえて考える総合的な⼒が求められます。
知識をもとに解答に至るまでの道筋を考え、わかりやすく記述する力が⼤事です。

③複数資料を利⽤する問題
どの教科もグラフや表などの資料を使って総合的な内容を問う問題があるのですが、中でも複数の資料を扱う問題が増えています。
情報から正しい内容を読み取るのは当然のこと、資料を比較して課題を発見することや内容を関連付けて利⽤することなど社会人として必要な力が見られています。

総じて、課題の「発⾒」→「追究」→「解決」という探究の過程を重視しているようです。
⾝近な事象についての知識や理解を通して説明する⼒をつけ、多様な視点と技能の組み合わせで社会課題を解決してほしいという意図が感じられます。まさにSociety 5.0が意識されていますね。

4.高校受検生の傾向

まず「受験」ではなく「受検」となっていることに気がつきましたか?
公立高校入試は「高等学校入学者選抜学力検査」なので「受検」なんです。厳密には「入試(入学試験)」でもないということですね。これ、マメ知識。

最近の高校受検生は「無理しない」「頑張らない」子が多いようで、チャレンジするよりも身の丈に合った高校を選ぶケースが増えています。大学受験と同じく「行きたい高校」より「行ける高校」の受検です。
このことは倍率1.0を下回る高校が増えたことが最大の要因として考えられます。
倍率が下がったのは少子化もありますが、私立単願(私立高校だけを受けること)の増加も影響しているでしょう。私立高校に通う高校生への国の就学支援金の上限が引き上げられ(年収によって金額は異なります)、さらに青森県は独自の「就学支援金」を上乗せします。これにより授業料が実質無償化となり、学費の面だけで私立高校に進学できなかった受検生の選択肢が広がりました。

「○○したいから△△高校に行くんだ!」という目的意識のある子ではなく、偏差値だけを基準にして選ぶような子は「そこそこの頑張り」で進学できてしまいます。それが学習意欲の低下につながり、特に学力中間層で入試得点の低下傾向が見られるようになってきました。

5.受験のために小学生のうちに身につけておきたいこと

大学合格や高校合格はゴールではなく通過点でしかありません。人生100年時代においては学校を出た後の方がずっと長いので、生涯にわたって学び続けることが大切。小学生のうちに一生涯学び続けるためのベースをつくり、その通過点である受験(以下、受験に統一)を軽やかに乗り越えてほしいと思います。

受験を見据えた場合、小学生段階で大切なことは以下の5つ。

①学習習慣
②知識・技能
③考える力
④伝える力
⑤自己肯定感

①学習習慣
中学生以降で学力不振に陥る子には学習習慣のないケースが多く見受けられます。
小学生のうちに学習習慣を身につけておくと中学生以降での伸び悩みを防ぐことができます。
なるべく早いうちから決まった時間帯に勉強するクセをつけ、歯磨きや入浴のように生活の一部にしておきたいものです。「勉強しないと気持ち悪い」くらいにまでなればこっちのもの。
保護者さんがお子さんと同じ時間に仕事したり読書したりする姿を見せれば、自然と習慣化に導くことができると思いますよ。

②知識・技能
例えば中1の数学で最初に習う「正負の数」で、基本的な計算方法はわかるのに正解できない子がいるとします。原因を探ると、どうやら小数や分数が含まれる式で解けていないようです。そういう子は倍数・約数、約分・通分、九九・・・とわからなくなったポイントまで遡ることになります。その間にも学校の授業はどんどん先に進むので、夏休みくらいまでとても苦しい時期が続いてしまいます。
また、中学校の社会と理科は小学校の内容を広く、深く、詳しくしているにすぎません。小学校で社会が苦手だったために中学校で苦労する子をたくさん見てきました。
いずれにしても、小学校で身につけておくべき知識と技能が定着していれば中学校で楽にスタートを切ることができるのです。特に算数・数学は知識と技能を積み上げていく教科なので「わからない」を放置しないようにしましょう。
いくら「考えさせる」問題が増えているとはいえ、思考の基となるのは知識ですから。

③考える力
知識と技能を得たら、次はそれらを活用する段階です。既にある知識を組み合わせたり、知識を引き出して資料から情報を読み取ったりすることで応用問題や発展問題に答えられます。
考える力をつけるには日頃から質問するといいですよ。例えば、一緒に宿題をやる際に「まずはどこを見たらいいかな?」「どうしてそう考えたの?」のように。「いや、違うよ」と否定してはいけません。そうすると何も答えてくれなくなります。「なるほど、そう考えたんだね」「じゃあそれでやってみよう」といったん受け止めてください。うまくいかなかったら「どうすればいいと思う?」と質問してもう一度考えさせたらいいんです。その繰り返しが思考力を育てます。

④伝える力
知識・技能、思考力が身についたとして、それらを答案用紙に的確に表現できなければ正答にはなりません。単語で答えることはできても、順序だてて文として説明するのが苦手な子も多くいます。
③と重なりますが、これも日々の「問い」で育むことができます。例えば、テレビや動画を視聴したら「ストーリー教えてよ」「どういうところがおもしろかった?」とか、ゲームであれば「どんな戦略でやってるの?」とか。返答が単語だけだったり説明になっていなかったりしたら「じゃあさ~~」「◇◇ってこと?」「もう少し詳しく教えてほしいな」など更に質問したり補足したり。さりげなく5W1Hを散りばめられたらいいですね。
興味を持たれていると感じればイヤがらずに答えてくれると思います。しつこくならない程度に尋ねてみてください。

⑤自己肯定感
いい面も悪い面も含めて自分自身に満足し、自分自身に価値があると認め、自分のことを大切な存在だと思える感覚が自己肯定感。自己肯定感が高ければ意欲的に学習したり、失敗してもめげずに前向きに受け止めたりできます。そうすればテストの点数が低くても、第一志望の学校に不合格でも、次にどうすればいいか自分で考えて乗り越えられます。
結果ではなく努力の過程を褒めたり、褒めポイントを具体的に伝えたり、肯定していることを伝えたりすれば、子どもは「自分は大切な存在なんだ」というメッセージとして受け止めます。「前より正解が増えたね。繰り返しチャレンジしたもんね」「宿題を忘れちゃった日もあるけど、メモを貼って忘れないように工夫してるのを見たよ」「簡単に諦めなくなったのが嬉しいな」など。
とても難しいですけど、子どものありのままの状態を肯定し、受け入れることが大切です。

6.知識を身につけ、知性を磨こう

私立大学の約半数で定員割れを起こしていることから、今後は統廃合が進むことが予想されます。県立高校も同様です。どの高校を残すか、どういう高校にするのか、地域バランスも考慮しながら検討がなされています。おそらく、ここ数年のうちに大学と高校を取り巻く環境は大きく変わるでしょう。
また、「スマホがあれば知識なんていらないんだよ」という人がいます。スマホがあれば最短ルートで正解を知ることができますからね。実際、私も塾生に質問されたらネットで調べることがあります。大手学習塾では英作文や数学の記述問題などを採点するために生成AIを用いたアプリ開発が進められているという記事もありました。

そんな時代に大切なのは「自分の頭で考える」ことと「問いを立てる」こと。それらは知性と呼ばれます。変化と情報の波に飲み込まれないためには「ちょっと待てよ」と疑問を持ち、考えなければなりません。その根拠となるのが知識です。知識があるから気づけるし、調べられるし、判断できるのです。教科書やネットで得た情報と、土いじりや料理など実際に体験して得た情報とが融合して知識となり、やがて知性となります。

経済産業省が掲げる「未来の教室」が目指す姿。
教科学習かSTEAM教育かの二者択一ではなく、両方で知性を磨いていくというのが「未来の教室」の考え方。
「知る」と「創る(探求する)」をぐるぐると回していくことで、子ども達一人ひとりの“ワクワク”を醸成し高めていく。

教科学習かSTEAM教育かの二者択一ではなく、両方で知性を磨いていくというのが経済産業省が掲げる「未来の教室」の考え方。
学校だけでなく、家庭内や地域などで「ワクワク」できる機会が増えたらいいですね。

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